入管の現地調査が来た!? ヒアリングシートから読み解く実務の要所

a woman writing on a book while holding a calculator

先日、関西地方の企業様において、入管職員が訪問し、特定技能外国人を名指ししてのヒアリングの申し入れがありました。
当時は業務の都合で特定技能外国人本人が仕事場を離れることができず、その旨を承知した入管職員が残していったのが「就労状況に関する確認書(ヒアリングシート)」です。

特定技能外国人を雇用している事業所には、遅かれ早かれこうした調査が入ると言われていますが、どのように対処するのがベターなのでしょうか。

入管による現地検査はいつくる?

日本国内で活躍する特定技能人財が増加する中、出入国在留管理局(入管)による現地調査やヒアリングが事業所に入ってきたという話が増えてきています。
実は特定技能外国人を受入れている事業所へのアポ無し検査は、制度開始時点で想定されていた事態だったのですが、特定技能スタートまもなくしてコロナ禍に陥り、対面接触を極力控えるべしとされていた当時の情勢から、このアポ無し検査はしばらく行われない時期が続いていました。
その控えられていた「アポ無し訪問」も、今や日常の光景に戻りつつあるようです。

実際にこの訪問がいつ行われるのかは、予見できないのが本音です。コロナ禍による制限が緩和されてしばらくは、事前に事業所へ連絡をしてから訪問するというパターンも一定の期間行われたようです。
今回入管職員が来たという事業所様にはそうした事前連絡はなかったということから、もともと予定していた直接訪問というスタンスに戻ったと見るべきでしょう。

ただ、冒頭申し上げたように、今回は特定技能外国人に直接ヒアリングすることがかなわなかったため、代わりに特定技能外国人にシートを書いてもらい、後日提出して欲しいというのが入管職員の依頼だったようですが、この一見簡素な書類には、現在の制度運用において何が重視されているのか、その核心が詰まっています。

現場に委ねられた「多言語化」の課題

このヒアリングシートを手に取ると、まず目につくのは「言語」の問題です。
地域によっては、漢字にルビこそ振られているものの、母国語の併記が一切ないケースが見受けられます。過去には他県で特定技能ベトナム人へのヒアリングシートにはベトナム語が併記されていた事例もあり、行政機関としての対応に地域差があるのが実情です。

いくら技能実習生よりも高い日本語習得度があると認められているとはいえ、日本語能力が発展途上にある特定技能人財にとって、日本語のみの質問を正しく理解して回答できる保証はありません。しかし、だからといって企業担当者が回答を代筆したり、誘導したりすることは、後に「本人の真意ではない」という疑義を生む最大のリスクとなります。

ここは入管側の対応に少々首を傾げざるを得ないところでもありますが、あらぬ誤解やリスクを避けるためにも基本的には本人に書かせることが大原則と考えたほうが良さそうです。

ヒアリングシートが照射する「6つの重要点」

実際のシートに記載されていた質問項目を整理すると、主に以下のような事項について問われているようです。
これを見る限り、入管が現在、どのような視点で「適正な雇用」を定義しているかが浮き彫りになります。

  • 契約の透明性: 働く前の説明、実業務、給与、勤務時間が契約と相違ないか
  • 身分証の自己管理: パスポートや在留カードを本人が保管しているか
  • 不当な拘束の禁止: 早期退職時の「違約金」などの不当な約束がないか
  • 支援体制の履行: 支援担当者による3ヶ月に1回以上の面談が行われているか
  • 生活の質と人権: 生活上の困りごとの有無、および妊娠・出産を理由とした不利益な扱いの示唆がなかったか
  • 信条の自由: 信仰している宗教活動に対する不当な干渉がなかったか

特に、妊娠・出産や宗教に関する問いは、特定技能制度開始前、技能実習が活発だった頃から散々問題視されてきた人権問題を反映したチェックが厳格化していることの現れといえます。

実務上のリスク管理と冷静な対応

行政側が「とりあえずシートを置いて帰る」という対応をとる背景には、限られた人員で現状把握を広範に行いたいという意図が見え隠れします。
その「簡素なシート」への回答内容が、後の在留資格更新や受入継続に直結する重みを持っている一方、そのプロセスをどのように完結させるかは企業側に委ねられています。

こうした状況下では、形式を整えること以上に、内容の「真正性」を担保する冷静な対応が重要です。

  • 正確な理解を助けるプロセスの確保:日本語のみのシートであれば、通訳を介して一問ずつ意図を説明し、本人の言葉を拾い上げること。
  • 「本人の自筆」というエビデンス:拙い日本語であっても、本人が内容を理解し、納得して自ら記入したという事実を残すこと。
  • 支援記録との整合性:シートの回答内容が、日頃の支援記録簿や面談記録と矛盾していないかを確認すること。

制度成熟期に求められる企業の姿勢

特定技能制度の開始から数年が経過し、入管の業務も「許可を出す段階」から「運用の適正さを厳格に監視する段階」へと移行しています。地域によって調査の徹底度に差があるという理不尽な側面は否定できませんが、確かなのは「いつ、どのような形で確認が入っても揺るがない体制」を築いている企業こそが、安定的に人財を確保できるという点です。

行政の動向を冷静に観察し、形式的な手続きの裏にある意図を汲み取ること。それが、これからの外国人財活用におけるリスクマネジメントの要石となります。

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