先日、産経新聞から『専門職資格「技人国」の外国人、3月から派遣元が誓約書 単純労働従事の指摘受け』という記事が出ていました。
今回は、このニュースの裏側にある意図と、私たちが今後どのような姿勢で外国人財の活用に向き合うべきか、弊社なりに考察してみたいと思います。
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なぜ今、厳しい「誓約書」が求められるのか
今回の運用変更の背景には、長年続いてきた「在留資格の目的外利用」という根深い課題があります。
そもそも「技術・人文知識・国際業務(略して技人国)」という在留資格は、記事中にも説明があるとおり本来専門的な知識を活かすホワイトカラーの資格です。しかし、深刻な人手不足を背景に、実態は製造や物流の現場作業でありながら、書類上だけ「通訳」や「エンジニア」として申請し、入国させるケースが一部で常態化していました。
入管当局にとって、これまでは以下の2点が大きな壁となっていました。
- 事後追跡の困難さ:一度1〜3年の在留期間が付与されると、その期間中に実際にどのような業務に従事しているかをリアルタイムで把握するのは、事実上困難でした。
- 「知らなかった」という逃げ道:不適切な就労が発覚しても、派遣先企業が「派遣元を信じていただけで、違反だとは知らなかった」と主張すれば、それ以上の責任を問うことが難しいという側面がありました。
しかし、2019年に一部の業界に限られるものの、現場作業を正面から認める「特定技能」制度が創設されたことで、当局のスタンスは明確になりました。それは「現場の仕事なら特定技能がある。それを使わずに技人国で作業させるのは、明確な制度の悪用である」という論理です。
現に特定技能制度の開始以降、技人国で在留していた人物の在留期間延長申請が不許可になったという事例は、そこかしこで耳にするようになっていました。
とりわけ派遣業では技人国の在留資格を持つ外国人を囲い込み、現場作業に従事させているウワサは枚挙に暇がなかったため、今回の誓約書導入は、当局がこうした「言い逃れ」の道を完全に断ち切る決意の表れだと言えるでしょう。
「誓約書」が意味する、派遣先企業への警鐘
今回の報道で最も注目すべき点は、「派遣元だけでなく、派遣先企業も署名した誓約書」が求められるようになる、という点です。
入管当局にしてみれば誓約書を提出させることにより、派遣先の「知らなかった」という抗弁を無効化することを意味します。派遣先企業にも、受け入れる人財の在留資格と実業務の整合性を確認する「重い責任」が法的に課せられることになります。
リスクは「技人国」の枠内にとどまらない
ここで最も危惧すべきは、一つのミスが会社全体の外国人雇用に波及する可能性です。
もし「技人国」人財に不適切な就労をさせていたと判断され、誓約書違反となった場合、その影響は当該人財だけにとどまりません。
同じ事業所で「特定技能」や「技能実習」の人財を受け入れている場合、企業としてのコンプライアンス(法令遵守)体制が欠如しているとみなされ、それら全ての受け入れ継続が困難になる「連鎖的なリスク」を孕んでいます。
せっかく育て上げた大切な人財たちを一挙に失うことは、事業継続そのものを揺るがす甚大な痛手となる可能性をもたらします。
今後とるべきスタンス
今回の運用変更を、単なる一過性の締め付けと捉えるのは早計です。
先の衆議院選挙において、多くの政党が外国人労働者問題に言及したことからもわかる通り、在留外国人の増加に伴って世間の目はかつてないほど厳しくなっています。
外国人雇用はもはや「現場の調整」という枠を超え、国政の重要課題であり、社会全体の関心事となっているのです。
こうした世論の流れに伴い、企業にはこれまで以上の高いコンプライアンス意識が強く求められています。「知らなかった」や「現場の判断だった」では済まされない、「社会から信頼される雇用主としての姿勢」が問われているのです。
実務レベルで策を講じるなら、技人国やその他外国人財が、実際に行っている業務が在留資格の趣旨に100%合致しているか、今一度「客観的な目」で確認したり、誓約書を「形式的な書類」にせず、派遣元企業と共に「適正な雇用を守る」という共通認識を改めて確認するといった対応が必要になるかもしれません。
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